コロナ後遺症について
最近、コロナウイルスの症状(熱とか、咳とか、咽頭痛など)は回復したにもかかわらず “ 後遺症 ” と思われる症状に悩む患者様が少なからずみられるようになりました。
例えば、「コロナにかかってからしんどい、やる気がでない」「コロナにかかってから喉がスッキリしないし咳も続く」などです。
いまだわからないことが多いですが、後遺症がどのようなもので、どうしたら改善していくのか、ということを述べたいと思います。
目次
1、コロナ後遺症にはどんな症状があるの?
代表的な症状には以下のものがあります。
外来をしていると、咳がなかなか止まらない、いつまでも痰がスッキリしない、コロナにかかってからやる気がでない、眠れない、頭が重くて痛い といった症状が多いと感じます。
2、どのくらいの頻度でコロナ後遺症になるの?
COVID-19 と診断され入院歴のある患者 525 例の追跡調査があります。
入院するほど状態の悪かった患者さんのデータであり、自宅療養で済んだ比較的軽症の患者様の背景とは違いますので、解釈には多少注意が必要です。
コロナ感染から時間がたてばたつほど、後遺症は改善していくことがわかります。
ただし感染して6か月経っても、10人に1人以上は疲労感・倦怠感、息苦しさ、睡眠障害、思考力・集中力低下、脱毛 に悩んでいることがわかります。
海外では,高齢、肥満、女性で後遺症がみられやすいという報告があるようです。
3、後遺症にならないために、どうしたらいいの?
ワクチン 2 回接種後にコロナウイルスに罹患した場合、28 日以上遷延する後遺症が半減した との報告もありますので、後遺症予防としてワクチン接種が有効である可能性も考えられます。
4、後遺症にかかったらどうしたらいいの?
①呼吸器症状(息苦しさ、咳、痰)
まずはコロナの後遺症と決めつけず、肺炎や心疾患(心不全、心筋梗塞など)がないか考えます。必要に応じて基本的な検査(胸部 レントゲン、心電図、血液検査、血中酸素濃度の測定)等を行います。
これらを検査しても異常所見が認められない場合は、うつ・不安症の可能性も考えられます。
呼吸器症状の後遺症は時間的経過で回復することが多いので、せき止めや喀痰を減らす薬、吸入薬 等で対応します。
②嗅覚・味覚障害
デルタ株からオミクロン株にかわり、嗅覚・味覚障害の頻度は 34%から 13%まで減少しました。
一方で感染者数自体は増加してしまったため、トータルでは嗅覚・味覚障害の発生者数が減少したとは言えません。
幸いなことに、発症当時は高度な嗅覚障害や味覚障害があったとしても数週で多くの症例が改善します。
一方、発症後数カ月にわたり改善しない症例も少なからず認められるようで、6カ月後に嗅覚・味覚障害を認める例はそれぞれ7%、9%も認められます。
対応としては、
【嗅覚障害】
鼻腔内の内視鏡による観察、嗅覚検査など耳鼻咽喉科専門診療が必要であり、耳鼻咽喉科へ紹介させていただきます。
【味覚障害】
コロナ後遺症だけでなく、口腔乾燥症(シェーグレン症候群を含む)、口腔真菌症(かび)、亜鉛欠乏、鉄欠乏性貧血、ビタミン B1 や B12 の欠乏、心因性(ストレス)による症状の可能性もあります。
よって、これらの診断のために、口腔内の診察や血液検査を行います。
③精神・神経症状(倦怠感、易疲労感、「頭がボーっとする」ような症状、集中力の低下、不安・焦燥感、抑うつなど)
罹患後にみられる抑うつや不安といった症状は、時間経過とともに徐々に改善し、情緒の不安定感や不規則な生活リズムなども元の状態にまで回復する場合が多いと考えられます。また、COVID-19 罹患により、環境がが大きく変化して経済不安などが生じていることも想定されます。
家族や周囲との関係や社会経済状況なども踏まえ、患者様の心理的側面を十分に理解するためのコミュニケーションが重要だと考えられます。
④痛み
一般的な疼痛治療(痛み止め)を行います
⑤脱毛
COVID-19 から回復した後に脱毛症が出現することがあります。
COVID-19 の症状発現から脱毛症出現までの平均日数は 58.6 日、COVID-19にかかった患者さんの22.7 %が脱毛症を経験し,さらに 16 % が 4 週後時点で、6.3 % が 12 週後時点でも脱毛症の症状みられました。
また脱毛症の症状が回復するまでの平均期間は 76.4 日でした。
ただし脱毛症は可逆的(もとに戻る)と考えられておりますのでご安心ください。
参考文献
新型コロナウイルス感染症診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント第1版