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糖尿病とインスリン QandA

ここでは、外来をしていてよく皆様に聞かれるインスリンにまつわる疑問点を解説していきたいと思います。

目次

①インスリンはからだに悪いの?早死にするのでは?

②先生はインスリンが好きですか?インスリンはやめられないの?

③インスリンを打つと低血糖で倒れるのではないか?

④インスリンの針は痛くない !?

⑤インスリン注射は難しそうで、できそうにないですが・・?

⑥インスリンを打つと、これまでのライフスタイルを大きくかえないといけないですか?

⑦インスリン治療中に運動するときは、なにか気を付けることはありますか?

⑧インスリンの保管方法は?

 

①インスリンはからだに悪いの?早死にするのでは?

☞インスリンはもともと身体にあるホルモンであり、からだに悪いということはありません。

そもそも膵臓がバテテしまって体の中のインスリンというホルモンが少なくなったり、インスリンの効きが悪くなることで発症するのが糖尿病です。不足したインスリンを外部から補う治療法が理にかなっています。

もちろん糖尿病だからといって全員に全員、インスリンを使用するわけではありません。糖尿病の状態の程度により、インスリンを使用せざるをえないほど重篤な状態なのか、インスリンを使用しなくてもなんとかなるレベルのものなのかを見極めて診療にあたっています。

身体が重篤な状態にも関わらずインスリンを打たないままであると、ただでさえバテテいる膵臓にさらに負荷をかけることになりますので、決して将来的には良い結果になりません。よって、このような状態と判断すれば、私は強くインスリンを薦めさせていただきます。

糖尿病が重篤な状態であっても、そこでしっかりとインスリンという援軍を外部から与えると、一時的にはインスリンを使用したとしても、自分自身の膵臓は休むことができて、インスリンを将来的にやめられる可能性は十分にでてきます(その場合でもある程度の飲み薬は必要とは考えます)。

人生もそうかもしれませんが、傷口は浅いほうが早く回復します。糖尿病も同じです。

「インスリン=早死に」という誤解をされている患者様もいらっしゃいますが、それはインスリンが死を招くのではなく、「インスリンを打たないといけないよう重篤な状態そのものが死を招く」ということではないかと考えられます。

②先生はインスリンが好きですか?インスリンはやめられないの?

1型糖尿病患者様や、2型糖尿病患者様の中でも糖尿病歴が長い方、妊娠糖尿病患者様 など、どうしてもインスリンが必要な場合はあります。この場合には、好き嫌いでなく、その人にベストな選択肢だから という理由でインスリンを使用させていただきます。

一方で、インスリンが必要かどうか微妙な状態の患者様もいらっしゃいます。

そういった患者様に対しては、私はできるだけ内服薬をやりくりしたり、週に1回の注射(GLP1製剤といいます)を上手に使用し、インスリンを使用しない方法を提示させていただいています。

その理由としては、インスリンは低血糖のリスクが高いこと、インスリンを打つことで友人とのランチに制限ができてしまう可能性があること、インスリンを使うことで制限される職種があること(例えば、ドライバー業ではインスリンを使用していることは言い出しにくい風潮がある企業もあります)、インスリンは飲み薬に比べて手間暇がかかり、打つ場所を探したりインスリンの持ち運びにも気を遣うこと、等があげられます。

そしてなによりインスリンは、コストが高いことがネックとなります。

インスリンそのものの値段は、バイオシミラー製品といって、先行の医薬品と品質、効き目や安全性が「同等」であることが検証された医薬品の登場により1本1500円(3割負担であれば450円。1本あれば1か月もつ患者様も多くおられます)程度にまで下がってきています。

しかし、インスリンを打つことで在宅自己注射指導管理料や、血糖を測定することでSMBG(自己血糖測定)加算をプラスアルファで支払うことになり、これが月にして約7000円程度かかります(諸条件によって異なりますので、お問い合わせください)。

これには、診察代や検査代金は含まれておらず、これらを合算するとどうしても月あたり1万円程度の出費になります。

自分自身の身におきかえても、月に1万円の支出が永続的に続くのは非常につらいことと感じます。

よって、インスリンや自己血糖測定は本当に必要なときだけ、最短の期間で使用する、そしてやめられそうならやめる ということが皆様にとっての生活の質をあげると信じています。

糖尿病専門医としてしっかりと身体の状態を見極め、皆様にベストな治療法を提示させていただきますので、インスリン治療でお悩みの方は一度相談ください。

③インスリンを打つと低血糖で倒れるのではないか?

☞残念ながらこれは正しいと考えます。

糖尿病患者様が低血糖になる理由は、インスリンと、飲み薬の中でもSU薬というものが2大原因です。

特に1型糖尿病の患者様においては、皆様が感じられているとは思いますが、程度の差こそあれ、インスリンによる低血糖には必ずなっています。

幸いにしてここ数年間、自分自身で外来をみている患者様が重症低血糖のために救急車を呼んだケースはありませんが、それでも油断はしてはいけないと常々考えています。

低血糖を起こしやすいのは、1型糖尿病の患者様や、2型糖尿病では高齢で腎機能が悪く、HbA1cが良い患者様ということが統計学的にわかっていますのでと特に注意を払っております。また以前に重症の低血糖をおこした患者様は繰り返しやすいこともわかっています。

低血糖になるべくはやく気づくためには24時間持続皮下血糖測定器(リブレ®)を用いることが非常に有用と考えられますので、当院では積極的に導入しております。

ご興味のある方は、相談ください。

④インスリンの針は痛くない !?

インスリン注射用の針は細くて短く、痛みが少なくなるよう工夫されています。
採血用の注射針の3分の1ぐらいの細さです。
実際に、初めてインスリンの針をさしてみた患者さんからは、「少しチクッとしたけど,こんなものか」「針を刺したのが分から
なかった」「全然痛くない」いう声をよく聞きます。

しかし、包み隠さずいうと「あたりが悪くて痛かった」という声も当然あります。
 初めて自分でインスリンの針をさすのは誰でも不安かと思いますので、看護師がしっかりとサポートさせていただきます。

⑤インスリン注射は難しそうで、できそうにないですが・・?

たしかにインスリンを打つ前はみなさん、そうおっしゃいます。僕自身もそう思っていました。

ただ、実際は70歳代、80歳代の方もできておられますし、目が見えにくい方でも問題なくできています。

患者様が簡単に操作できるよう、改良に改良を重ねてインスリン型注射器は作られていますので、そこまで難しく考えなくてもよいのではないかと思います。

ただし、認知症のためになかなかインスリン注射手技が覚えられない場合や、脳梗塞の後遺症で手が動きにくい場合 などご自身の努力だけではどうしようもない場合はあります。その場合はなにがしかの代替案を提案させていただきますのでご安心ください。

⑥インスリンを打つと、これまでのライフスタイルを大きくかえないといけないですか?

これも大きな心配事と思います。インスリンを打つことで、仕事は大丈夫だろうか、運転や運動は大丈夫だろうか、友達との外食はどうしようか、食事制限をする必要があるのではないか・・etc

おひとりで抱え込んでしまうとどうしてもよくない方向に考えてしまいがちです。

同じ悩みをもつ患者様本人、ご家族様、ご友人などが、日ごろの悩みや情報交換をする場として、

DMF神戸という会があります。

こういった会への参加で、救われた、前向きになれた という方もおられます。

また、プロ野球 阪神タイガースの岩田稔投手やプロサッカー ヴィッセル神戸のセルジ サンペール選手も1型糖尿病でありながら、活躍されていますね。

⑦インスリン治療中に運動するときは、なにか気を付けることはありますか?

普段の生活よりも激しく長い時間の運動は、低血糖を起こしやすくします。

運動している最中や直後だけでなく、その日の夜や翌朝に低血糖が起きることもよく経験されます。

運動中はだるさ、急な空腹感などの症状がみられたらすぐに血糖値を測りつつ、

運動後も、寝る前にクッキーやチーズを摂取して夜間の低血糖予防をしましょう。

⑧インスリンの保管方法は?

新品・未使用のインスリンは冷蔵庫で保管します。凍らせてしまうと、インスリンが失活してしまいますので、絶対に凍らせないでください。
冷蔵庫ならドアポケットがオススメです。
新品を使い始めるときは,室温にもどしておきましょう。
冷たいままだと,注射するときに刺激で痛みを感じやすいです。

使用中のインスリンは室温で保管します。
 インスリンは光と熱に弱いので、必ずキャップをして、直射日光が当たらない場所に保管しましょう。
室温(1~30℃)なら1ヶ月程度は効果が落ちませんが、夏場であれば30℃を超えることもありますので、保冷バッグなども活用しましょう。車から出るときは必ずインスリン製剤を持ち歩きましょう。

 

■参考文献

糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会報告

糖尿病専門医研修ガイドブック

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