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認知症QandA

ここでは、認知症患者さんを抱えるご家族様からのQandAをまとめています

目次

①もの忘れがひどいです。どうしたらいいですか?

②同じことを何度も尋ねてきます。どうしたらいいですか?

③「食事を食べていない」と言い張ります。どうしたらいいですか?

④やる気や意欲がないように感じます。どうしたらいいですか?

⑤できていないのに、本人はできている と主張します。どうしたらいいですか?

⑥時間や場所を間違えます。どうしたらいいですか?

⑦身だしなみに気を配らなくなりました。どうしたらいいですか?

⑧「財布を盗まれた」などの妄想がみられます。どうしたらいいですか?

⑨徘徊します。どうしたらいいですか?

⑩食事を拒否します。どうしたらいいですか?

⑪入浴を拒否します。どうしたらいいですか?

⑫内服を拒否します。どうしたらいいですか?

⑬デイサービスは意味ありますか?

⑭デイサービスを拒否します。どうしたらいいですか?

⑮夕方になるとソワソワします。どうしたらいいですか?

⑯興奮や暴力行為がみられます。どうしたらいいですか?

⑰施設入所をしたほうがよいタイミングとはいつですか?

⑱介護認定の結果に納得できません。どうしたらいいですか?

⑲訪問セールスや悪徳商法に騙されました。どうしたらいいですか?

①もの忘れがひどいです。どうしたらいいですか?

メモを利用したり、置き場所を決めておく。大事なものにはアラーム音をつける。

まだ初期段階の認知症ならば、メモを利用することでかなり物忘れを補うことができます。

大事なことは紙に書いていつも決まった場所に貼っておくとか、 大判のノートに書いて目につきやすい所に置いておくように決めましょう。物の置き場所を決めて、 「眼鏡は電話の横」 のように書いて、目につきやすい所に貼っておくとよいでしょう。

ただしこれらは初期には役にたっても、認知症が進行するにつれてメモしたことやそのメモをどこへやったのかを忘れてしまうので、利用が難しくなります。

リモコンでアラーム音を流すことのできる器具も販売されていますので財布や鍵など紛失しやすく大切なものには、 使ってみてはどうでしょうか

規則正しい生活パターンに慣れておく

規則正しい生活を初期のうちから作っておくと、 混乱することが減り、 たとえ物忘れがあっても生活の支障になりにくいようです。朝は7時に起きて顔を洗い、 朝ご飯は7時30分、 食後トイレに行き、歯磨きし、デイサービスにいって運動と入浴 など、ある程度時間割に沿った生活を送ってもらいましょう。

「いつも同じでは退屈だろう」とご家族様は思われるかもしれませんが、認知症が進行するにつれて変化に対応する力が低下したり、活動意欲がなくなりがちで、いままでやったことがないこと、新しいことに戸惑いや躊躇を覚えます。 放っておくとだんだん何もしなくなってしまいます。これを防止する意味からも、 生活パターンを確立して 「物忘れはあってもなんとか暮らしていける」 状態を長続きさせましょう。

②同じことを何度も尋ねてきます。どうしたらいいですか?

残念ながら、何度も同じことを尋ねるということは、前に尋ねたことそのものを忘れているということです。

初めの数回なら付き合えても、 回数が重なると周囲の方もうんざりしてくるでしょう。ついつい叱ったり、 いやな顔をしてしまいがちです。その時の顔は非常に怖い顔をしているものです。

また、毎回違った答え方をしようと考え込んで、介護する方が疲れてしまうこともあります。まじめに聞いたうえでなら何度でも同じように答えてかまいません。

いやな顔をしたりイライラしたりする気持ちはわかりますが、ここは「もし自分が認知症になったらどう接してほしいか」という視点を持って、できるだけ穏やかに誠意をもって対応したいところです。

さりげなくお茶に誘ったり、 髪の毛をとかしたりして、 何か別のことに気持ちを向けてもらう工夫も大切です。

③「食事を食べていない」と言い張ります。どうしたらいいですか?

食事を食べた出来事そのものを忘れてしまうのが、そもそもの認知症の症状です。

どれだけおいしいものを食べても、高価なものを食べても、そのこと自体を忘れてしまいます。

食事を済ましてからも 「食べていない」 と言い張り、 何度も食事を要求される方がいらっしゃいます。 「今食べたでしょう」 と言っても、 ご本人に食事の記憶がなく、 ひどい時には 「嫁が食べさせてくれない」 と近所に訴えるような事態になってしまいます。 「今準備をしていますから、 お茶でも飲んで待っていて下さい」 や「先にこれを食べておいてください」とお菓子やフルーツを出しておいて気をそらすことは有効です。

食事の後片付けをしばらくしないで、そのまま皆で団らんすると食事の記憶がとどまりやすいです。

④やる気や意欲がないように感じます。どうしたらいいですか?

認知症の初期症状としてうつ症状を呈する場合があります。また認知症の進行に伴い行動・心理症状(BPSD)の一つとして自発性の低下、意欲の低下が進行します。

認知症薬や抗うつ薬を使用することで改善する場合もありますので、一度御相談ください。

お薬以外にも、介護保険を利用してデイサービスにいったり、以前から慣れ親しんでいることを周囲がちょっとサポートして本人にやってもらうことで、意欲の改善がみられる場合もあります。デイサービス施設のスタッフは認知症のことをよく知っている専門家ですから、家族の方によるケアとは違った立場からご本人を支えてくれます。

いずれにせよ初めから欲張らず、ご本人のペースに合わせて、無理のないものから徐々に活動を増やしていきましょう。
「少しずつ1日に何回も・・・」というやり方が有効です。

なかなか誘っても患者様本人が乗り気でない場合でも、繰り返し誘い続けることは大切です。
また、ただ誘うだけではなく、一緒に行動することも必要です。
「おいしいお菓子があります」「お茶を入れました」など、食べ物をきっかけに働きかけるのもよいでしょう。

誘う人を替えてみると案外すんなり受け入れていただけることがあります。

⑤できていないのに、本人はできている と主張します。どうしたらいいですか?

認知症の患者様は、自分が病気になっている認識に欠けることが多いと言われています。そして現在を、 自分が若かった頃と勘違いして、 周囲の人や状況をその頃にあわせて解釈します。たいていは、ご自身が一番輝いていた時代、 たとえば会社でバリバリ仕事をしていた頃や、 子育てに追われていた頃に戻り、なんでも正しくできている、行っていると考えていることが多いようです。

「昔の思い出のなかに生きている」 という状態です。

このような場合でも、あえて否定せず、 相槌を打ちながら「昔の思い出のなかに生きている」 ご本人様の話を真剣に聞くことができれば素敵と思います。

⑥時間や場所を間違えます。どうしたらいいですか?

時間や場所の記憶や認識を見当識といいます。見当識障害とは、「いまがいつかわからない」「ここがどこかわからない」という状態で、アルツハイマー型認知症の初期にでてくる症状です。

また見当識障害には「目の前の人が誰かがわからない」という人の認識障害もあります。

時間がわからなくなると、朝・昼・晩の区別がつかなくなって、夜中に買い物に行こうと出かけることもあります。季節感も乏しく、季節にあった服装が選べなくなります。

場所がわからなくなると、「ここは自分の家ではない」と言い、昔住んでいた家や実家に帰ろうとされることもあります。迷子になることもしばしばみられます。入院すると「ここはどこ?」と混乱されることもよく見られます。

人がわからなくなると、「子供はまだ小学生」 と思っているため、 おじさんになった息子が顔を出しても誰かわからなかったり、 夫と間違えることも起こりがちです。 

時間がわからなくなった時の対処法

日ごろの会話のなかに「もう春ですね、暖かくなりましたね。今日は何月何日ですよ」など、季節や日付を感じさせる内容を意識して盛り込んだり、窓を開けて日光を取り込み、明るさから昼夜の区別がつくようにしましょう。

場所がわからなくなった時の対処法

「ここは自分の家ではない」と思っている場合に「あなたの家です」と説得するのは難しいことです。家かどうかで言い争うより「とにかくここは( 自分の家ではないかもしれないが)居ても安心できるところだ」と思ってもらうことが先決でしょう。

転居や改築、施設への入所など住む環境が変わる場合は、本人の思い出の品や使い慣れている家具などをできるだけもっていきましょう。

入院した場合は、できるだけご家族が面会に行ってご本人が不安にならないように気を配ってあげることが大切です。

人がわからなくなった時の対処法

アルツハイマー型認知症では、時間や場所の見当識と比較すると、人に対する見当識は長く保たれます。それでも、かなり進行するとご家族の見分けがつかなくなってしまいます。鏡に映る自分の姿を自分だとわからなくなることもあります。しかし、知人程度なら、わからなくても上手にとりつくろって不自然さを感じさせません。

ご本人が「馬鹿にされている」「軽く扱われている」と思わなければ、ご家族のことをわからなくなることがあっても、お互いの信頼関係を保ち続けることができます。

⑦身だしなみに気を配らなくなりました。どうしたらいいですか?

認知症が進行すると、身なりに対し無頓着、無関心になったり、意欲の低下から入浴や着替え、歯磨きなどを行わなくなることがあります。

できるだけ認知症の初期段階から、洗面・歯磨き・食事・排せつ・入浴・日帰り介護サービスへの参加など日課として行い、習慣化しておくことが重要です。
ご自分でできることは、見守りながらでもできるだけやっていただき、そのつど「すっきりしましたね」などと声をかけて、気持ちよさを再確認していただきましょう。

ご自分でできないことは介護者が手伝って、できるだけ毎日整えてあげてください。特に女性のお化粧は口紅をさすだけでも喜ばれるようです。
また、服装もきれいに整えてあげると、介護サービスのスタッフなどから「今日は明るい色のセーターで、お似合いですよ」などと声をかけてもらいやすくなります。

一度断られても手段や人をかえて何度か誘いましょう。前に誘われたことを忘れて、あっさり応じてくれることがあります。

⑧「財布を盗まれた」などの妄想がみられます。どうしたらいいですか?

アルツハイマー型認知症は「物盗られ妄想」といって、金品などを盗まれたという思い込みをしてしまいます。しまい忘れたり、 置き忘れたりした財布や眼鏡などの身のまわりのものを人に盗まれたと思ってしまいます。

レビー小体型認知症では「嫉妬妄想」といって夫や妻が浮気をしている、 と信じ込む妄想もあります。

この妄想の対象となるのはたいていご本人を身近でお世話している人です。妄想の対象にされた方は、 面と向かって暴言を吐かれるうえに、 どんなに自分がその人からひどい目にあわされているかを、 他の人に訴えますから、聞いているといたたまれない思いがしますし、 介護する気も失いかねません。徐々に自分が衰えてきたことの自覚から生じる不安や焦りが、 金銭への執着や見捨てられるかもしれないとの恐怖に発展するのだと思われます。これに加えて、 介護して下さる方への感謝や負い目、 上下関係の逆転といった変化が複雑に絡んで出現する症状といえるでしょう。

身近で介護している家族にとっては、「盗んだ」と言われたらたまったものではないと思いますが、「違います」 と否定しても逆に 「自分の言うことを信じてもらえない」 と不安や怒りでかたくなになり、 妄想が強くなることがあります。 「そうですか。困りましたねぇ」 など相槌を打ちながら訴えを聞き、 否定もせず、 肯定もしない態度で接することが大切です。

「それは大変!」と共感して一緒に探してあげることも有効です。本人が見つけ出せるように「ここを探してみましょう」と誘導したり、見つかったら一緒に喜んだりすることも効果的です。

周りの方には、 認知症の症状として妄想が生じることを説明して理解していただきましょう。妄想の対象となってしまった方は辛いですが、 周囲に認知症を知ってもらうよい機会ができたとプラスに解釈して、 介護の味方を増やして下さい。 

どうしても難しければ距離をとることも有効です。介護者が妄想の対象となり、 ご本人が激しく混乱したり、 介護する方に極度に負担がかかっている場合は介護を別の人に代わってもらったり、 施設や病院の入所・入院などを利用し、 一時環境を変えてみることも有効な手段です。

⑨徘徊します。どうしたらいいですか?

徘徊には色々な理由があります。

具体的には①物忘れによる道迷いの結果の徘徊 ②視空間認知障害による道迷いの結果 の徘徊 ③常同的周遊 (周徊) ④差し迫った必要を感じてある目的地に向かって歩く徘徊 ⑤ご本人も目的がよくわからずソワソワ歩く徘徊 ⑥せん妄による徘徊 ⑦今いる場所が退屈なため出歩く徘徊 等です。

(ア)物忘れによる道迷いの結果の徘徊

あまりよく知らない場所で道に迷ってしまうために、 帰ってこられず歩きまわるケースです。アルツハイマー型認知症の方でよく認められます。健康な 人であれば、1回で覚えられる道順も、アルツハイマー型認知症の方では覚えられません。また元の場所に戻ることもできません。そのまま歩き続け、行方不明になった 場所から遠い場所で保護されるようなことも起こります。 

(イ)視空間認知障害による道迷いの結果 の徘徊

私たちは目で見た情報を脳の中で分析して方向、 距離、 位置などを把握します。このようなことができなくなった状態を視空間認知機能と呼びます。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症の方は、 視空間認知障害が起こりやすく、 このために道に迷います。よく知った家の近所で迷う、昔から住んでいる家のなかで迷う、トイレの場所がわからないなどの場合は、これによる可能性が高いです。

(ウ)常同的周遊 (周徊)

前頭側頭型認知症の方は、 同じ行動をし続けたいという強い衝動を持ちます。その一つの形として、 ご本人が決めた特定のルートを毎日散歩するという行動が認められることがあります。この行動を止めることはなかなか困難ですが、アルツハイマー型認知症の方のように道に迷うことは比較的少ないです。しかしルートの途中で、 欲しい物があるとお金を払わずに盗ってくることがあり、 これが問題となることがあります。

☞この症状を止めるのは難しい場合が多いです。まずは本人が周遊するルートに危険な物や危険な場所がないかどうかを確認しましょう。ルートの途中でお金を払わずに何かを盗ってきてしまう可能性がある場合には、 そのお店の人にご本人の病気のことを説明し、 あとでお金を払いに行きますので、 連絡して下さいというようにお願いしておきましょう。どれくらいの時間をかけて周遊する かはおおむね決まっていることが多いです。もしも周遊の時間が長くなってきた場合は、変化が起こっている可能性があります。その時には再度患者さんの周遊につきあって、 変化がないかを確認して下さい。

(エ)差し迫った必要を感じてある目的地に向かって歩く徘徊

「ここは私の家ではないから、 家に帰らなくては」「子供が学校から帰ってくるので間に合うようご飯を作らなくては」「早く会社に行かなくては」など、 その方なりの強い理由があって歩いていくケースです。見当識の障害を伴うことも多いです。無理に外出を止めようとすると、 興奮が強くなることがあります。

☞ご本人は居ても立ってもいられない気持ちで飛び出そうとします。否定するとムキになるし、 暴力や暴言まで引き出しかねません。

「違う」とは言わず、 また「おかしなことを」と笑ったりもせず、 耳を傾けて、 ご本人がどんな気持ちでいるのか、 どこへ行こうとしているのかを聞いて下さい。そして、「それは大変ですね」「心配ですね」と、まず切迫したご本人の気持ちに共感してあげることが大切です。

そのうえで、「その服では外へ出られませんから、 上に着る物を探しましょう」 とか、「食事を作るのでしたらお米や野菜を用意しましょう。それともここで作っていきますか?」「会社に行くのに手ぶらではいけません。カバンを用意しますから、もっていく物を一緒に探して下さい」というように声かけし、外出しないで済む用事に関心を向けてもらいましょう。

「子供さんは今日はクラブで遅いです」「今日は日曜日で会社は休みです」と言って、 納得してもらえることもあります。それでも出て行かれる場合は、 仕方ありません。しばらく徘徊につきあってあげて下さい。それから、「少し疲れました。お茶でも飲みましょう」とか、「夜になってきましたから、 今日はここで泊りましょう」、 または偶然会ったふりをして「こんなところでお会いするなんて。 ちょっと寄って行きませんか?」と帰宅を促します。

玄関に鍵をかけるとドアを壊す方もいらっしゃいますが、「さわるな、 故障中」と書いて貼りつけておくと、 出て行かないケースもあります。

(オ)ご本人も目的がよくわからずソワソワ歩く徘徊

何か探し物や用事を思い立ったが、 歩いているうちに、 何をしようとしていたのか、そもそもの目的すら忘れてしまって、ただソワソワ歩き続けるケースです。目的は忘れていますが、 落ち着かない気分だけは残っていて、 じっとしていられない様子です。

☞「どうしたのですか?」とまず優しく声をかけてみて下さい。それからトイレに誘導してみます。

それですっきりされればよいですし、 違うようでしたらお茶を勧めたり (脱水による体の不調かもしれません) 、 いつもかけている眼鏡はあるか、 杖はもっているかなど、 探し物がないかを観察して下さい。探し物がはっきりしている場合は、 一緒に探してあげればよいですが、 よくわからない時は、しばらく雑談 (「今日の晩ご飯は○○にしようと思うんですけど、それでいいですか?」など) をして、 落ち着くようにしてあげて下さい。

(カ)せん妄による徘徊

主に夕方から夜間にかけて、 幻覚を見たり強い不安に襲われたりして家を飛び出してしまうケースです。ご本人は恐怖感でいっぱいなので、 制止しようとするとさらに興奮し、暴言や暴力に及ぶことがあります。

☞ 優しい声かけが必要です。ご本人は意識はあるものの半分寝ボケたような状態になっています。そばについているから安心するようにと声かけしましょう。また、 今はいつで、ここはどこかわからずに不安になっている場合には、 そのことを教えて、 安心してもらいましょう。

(キ)今いる場所が退屈なため出歩く徘徊

今いる場所に面白いことがなかったり、 気まずかったりするために、 外出するケースです。

☞差し支えなければ、 安全に気を配りながら外出させてあげて下さい。ご本人が季節に応じた服を選ぶことができなければ、 身だしなみに気をつけてあげましょう。徘徊の多くは、 今のお住まいが快く安心できる場所になることで、 和らいできます。

 

原因はさまざまにありますが、動き回ったり外へ出たがったりしている方を直接止めようとしても逆効果となります。

しかしどのタイプの徘徊も交通事故の危険、 帰ってこられなくなる危険、転倒する危険、また夏場は脱水、 冬場は凍死の危険までありますので、 まずはその対策をとっておきましょう。

<徘徊で脱水や凍死をおこさせないための手段>

服装は明るめの色で、 車から発見しやすいようにしておきましょう。コート、ジャケット、 パーカーの類は特に明るい色を選んでおくとよいと思います。

♠夜間、 車のライトで光るように、 服や靴に反射素材をとりつけておくこともよいでしょう。

服の裏や襟裏、 靴の側面に連絡先を書いておいたり、 財布、 定期入れに連絡先を書いたカードを入れておくことも大切です。

小型のGPSつき器具も販売されています。常時身につけてもらう、 服や必ず携帯するカバンに入れる、 縫いつけるなどして利用すると安心です。

♠玄関などに開閉すると音の鳴る器具やセンサーをつけておくと、 知らない間の外出が防げます。

♠「徘徊SOSネットワーク」など、 徘徊する方を発見するための取り組みを自治体で行っているところもあります。地域包括支援センターに問い合わせてみて、 該当していれば利用を申し込みましょう。

♠管轄の交番や警察署に顔写真と住所氏名を届け出ておくと、 保護された時の連絡が速やかです。

♠ご近所の方やよく利用する商店などに事情を話しておくと、 見かけた時にご本人に声をかけてもらったり、 ご家族に連絡してもらったりできるでしょう。

♠転倒しやすい方には、 外出時に帽子をかぶってもらう、 また靴はサンダルな どではなく、 しっかりしたものを履いてもらうことが大切です。

♠冬場や北国では、 とにかく玄関口にコートを置いておいて、 何はさておいても 出ていくご本人に着てもらって下さい。 

⑩食事を拒否します。どうしたらいいですか?

拒否にはたいていは理由がありますが、ご本人はその理由をうまく表現することができないため、 対応が難しくなります。

例えば、

  • 口内炎や入れ歯が合わないなどの口のなかのトラブル
  • 環境変化によるストレス
  • 気になることがある
  • 何らかの抗議、 抵抗の表現
  • うつ
  • 毒を盛られているといった妄想、 幻覚
  • 感染症や胃腸の病気
  • 便秘
  • 薬の影響

などが原因として考えられます。 

ご本人が理由を口に出して言われることはめったにありませんから、 周囲がよく観察して、食欲低下の原因を推察して下さい。

元気な頃と比較すると活動量が減っていることが多いので、 今までの食事の時間帯ではまだお腹がすいていないのかもしれません。時間帯をずらす、 何度にも分けて提供するなどの工夫をしてみて下さい。また、嗜好の問題の可能性もありますので、ご本人の好きな食べ物をお出ししてみましょう。

食べていただくことが先決ですので、 栄養の偏りは後回しにして、ご本人のほしいと思われるものを口に入れていただきましょう。アルツハイマー型認知症の方は甘味を好まれるようです。

ご本人からみた特定の方向や位置にある物に気づきにくくなるという症状もあるので、配置を変えたり、 ご本人の視線が向く所に置いたりしてみましょう。一品ずつテーブルに置いたほうが気が散らずに食べてもらえることもあります。

⑪入浴を拒否します。どうしたらいいですか?

入浴を拒否する理由としては、

  • 裸になるのが不安
  • 何をするのも億劫
  • 脱いだ服を盗まれるのではないかと気になる、誰かに見られていると思う
  • 身体障害のために入浴動作そのものができない
  • 入浴するということ自体が理解できない

などがあります。若い方のように毎日入浴する必要がない場合もありえますが、 それでも週に2度程度は入っていただきたいものです。

対応としては、気分のよい時をみはからって、 入浴を誘ってみましょう。

「温泉に入りましょう」「一緒に入りましょう」「○○がありますのでお風呂に入っておきましょう」「お風呂が沸きました。一番風呂ですよ」など誘い方を工夫します。散歩の後で 工夫します。 「汗をかいているからお湯をかぶるだけでも」と勧めてみると、 あっさり承知することもあります。

違う人に「久しぶりに背中でも流しますよ」と勧めてもらうのもよいでしょう。「病気になったら悲しいから……」とお孫さんなどに話してもらうと、 入ってくれることもあります。 

入浴を断られたらあっさり引き下がって、 しばらくしてまた誘うと、 今度は案外入る気になることがあります。 

ご家族が体を洗って介助してあげる場合、 ご本人だけが裸だと、 気恥ずかしく思って嫌がることがあります。こんな場合は、 介助するご家族も一緒に服を脱ぐと安心して入ってもらえます。

入浴剤を入れて温泉気分にしたり、 入浴後にビールやコーヒー牛乳を飲むなど楽しみを用意してはいかがでしょうか。楽しかった、 という感情の記憶は残りますので、 次も入ってもらいやすくなります。 

いきなり入浴が無理な場合は足浴から始めることをお勧めします。「気持ちいい」を実感していただくことで、 全身浴につなぐことができそうです。

入浴前には強く抵抗した方でもいったん入ってしまうと、 入浴後に「気持ちがよかった」と言うことが多いようです。今度はお風呂から出るのを拒否することもあります。 このような場合は、 ご家族もお風呂に入って「一緒にあがりましょうか」と言ったり、「ご飯ですよ」などと気をひくような言葉をかけましょう。

身体の動きが悪くて入りにくい場合は浴槽の高さと同じ椅子 (台) をぴったり浴槽の横につけると、 座りながらなかに入ることができます。ただし転倒の危険もありますので、 くれぐれも滑らないよう気をつけて、 無理はしないようにして下さい。

⑫内服を拒否します。どうしたらいいですか?

ご本人は「どこも悪くない」と思っていることが多いですから、 飲んでいただくのがまたひと苦労です。「毒を盛られている」といった妄想を抱いている場合もあります。無理に勧めてもすぐに吐き出してしまうことも多いので、 注意深い対応が必要です。

対応法は、「血圧が高いので血圧を下げる薬です」「ビタミン剤です」など納得していただきやすい説明をしてみましょう。

周囲の人が一緒に (ビタミン剤やラムネ菓子でもかまいません) 薬を飲んでみると服薬することがあります。

どうしても飲めない時は薬を飲むためのゼリーは市販もされていますから、そういったものに混ぜ込んで内服しましょう。食事に混ぜ込む方もいらっしゃいますが、 せっかくの食事がおいしくなくなっ てしまい、食事拒否につながりかねません。混ぜる場合は、 ほんの一口だけ別分けにして混ぜ、食事自体はおいしく召し上がっていただきましょう。

⑬デイサービスは意味ありますか?

介護保険のサービスを利用してデイケアなどでレクリエーション療法などに参加することは有効です。初めは戸惑われたり嫌がられたりするかもしれませんが、 規則正しく外出して人と交わることはよいほうに作用します。 また、 こうした施設のスタッフは認知症のことをよく知っている専門家ですから、 家族の方によるケアとは違った立場からご本人を支えてくれるはずです。 

家族の言うことは聞かなくても、デイサービスの職員の話すことは聞いてくれる場合もありますので、入浴をデイサービスでしてもらうのも良い手段でしょう。

介護サービスを利用する利点は色々あります。

患者さんがサービスを受けて楽しい時間を送ると、 その楽しい余韻により生活全般で精神安定が得られることをよく経験します。また昼間に心地よく疲れることにより、 夜よく眠るようになります。

②患者さんの規則正しい生活の維持につながります。 

③介護の専門家と接する機会ができるのでご家族が介護について専門家に相談しやすくなります。

④実際にサービスを受けている間、 ご家族は休息したり、 用事をすませたりできます。定期的にこのような時間をとることはご家族の生活の維持と精神安定にとても役立ちます。しかし介護サービスを自ら受けたいという患者さんはごく少数で、 ほとんどの方はサービスの利用を嫌がります。これはある意味当然のことです。誰でも慣れ親しんだ生活のパターンを変えることには抵抗があります。認知症の患者さんは健康な方よりも環境の変化にあわせることが苦手になり、 また意欲低下のために何をするのも億劫になるからです。しかし嫌がる患者さんでも、 ご家族や介護スタッフが工夫をすることで多くの場合、 サービスを利用できるようになります。

⑭デイサービスを拒否します。どうしたらいいですか?

介護サービスの利用を嫌がる患者さんに利用を勧める際に、 重要なことは、 色々な工夫をして根気よくサービス利用につなげようとする周囲の皆さんの働きかけです。ご家族は、 患者さんが嫌がるのなら行かせなくてもいい、 と思うこともあるでしょう。しかし介護サービスを利用せずにご家族だけで長く対応できる患者さんは、 周囲に患者さんのことをよく理解し、 お世話できる人がたくさんいるというような恵まれた方に限られるように思います。患者さんが、 介護サービスの利用を開始してから慣れるまでの間は、 患者さんが戸惑ったり、 混乱したりすることがあるかもしれません。しかしこの混乱を最小限にする工夫をして、 なんとか介護サービスをとりいれた生活を送っていただいた方が、 その後の患者さんとご家族の生活が安定することが多いと感じています。患者さんは病気が進行すると、 介護サービスを受け始める時の混乱も大きくなりがちです。また病気の進行により介護サービスで行われるリハビリの効果も少なくなると思います。介護サービスを利用した新しい生活パターンに早く慣れていただいたり、 予防的な効果を期待するならば、 早期からのサービスの利用が望まれます。施設の専門家を信頼しましょう。ケアの専門家として、患者さんが過ごしやすく、楽しめるように色々な工夫をしていただけます。男性の患者さんはなかなかサービスに慣れにくいことがありますが、介護スタッフが、机運びなどのちょっとした力仕事を患者さんの担当にして、その作業により皆がとても助かっているということを繰り返し、患者さんに伝えることによって、「私がいないと皆が困るから通う」という患者さんは多いです。

事業所の選択は重要です

どこの介護サービス事業所を利用するのかは大切な選択です。患者さんの意向も重要ですが、基本的にはご家族が、患者さんが好みそうなサービス事業所を選択してあげてください。通える範囲の事業所の情報を収集して、最後は2、3箇所に絞ってください。そしてそこにご家族が見学に行き、職員さんの話を聞きましょう。患者さんと年齢や状態が同じような患者さんが多い、おこなっている活動が患者さんにあいそう、働いている職員さんが楽しそうなどは大切なポイントです。

施設に慣れていただくためには

介護サービスに一人で参加するのに不安がある患者さんの場合は、最初はご家族も施設に一緒に行って、しばらく施設で過ごすという方法が有効です。患者さんが慣れてきたら、徐々に一緒にいる時間を減らしましょう。

見学を嫌がる患者さんには

見学も嫌がる患者さんの場合は、「明日、見学に行くよ」と言うと身構えて、さらに拒否が強くなることがあります。散歩の途中などで、施設の前を通りかかった時に、「楽しそうだから、覗いてみましょう」などというように患者さんに声をかけてみる方法はどうでしょうか。偶然その施設を見つけて参加するかのように振る舞うのです。この場合は、あらかじめご家族が、その施設の職員さんにその時に見学に行くかもしれないということを連絡しておいて、準備と対応をお願いしておく必要があります。

通所介護が難しい場合は

通所介護が利用できない場合には、まずケアマネジャーさんやヘルパーさんなどに自宅に来ていただき、その人達と患者さんとの間に人間関係を築くことを優先する方法があります。患者さんがその人達を信頼した時点で、それとなくデイケアなどに誘ってみてください。「この人が言うのならば行ってみようか・・・」と参加してくれることもあります。

ショートステイの定期的な利用も考えましょう

通所介護を受けている患者さんが慣れてきたら、ショートステイを定期的に利用することも考えてみてください。ご家族の余裕がさらに増して、よい生活が送れる可能性があります。

どうしても嫌がられる場合は

デイサービスにどうしても適応できず、有効な対策を講じることができないときには、一時的にデイサービスの利用を中断することも選択肢の一つです。

介護負担から家族はなんとかデイサービスを利用して欲しいと希望することは十分理解できますが、適応できない施設の利用を無理矢理続けることは、患者さんの精神状態の悪化を招く危険性が高いです。利用を一時中断し、再度利用できる機会を待ちましょう。

⑮夕方になるとソワソワします。どうしたらいいですか?

夕方になるとソワソワして落ち着かなくなったり、少しのことに声を荒げたり、「そろそろ家に帰らせていただきます」と徘徊を始めたりするのは、認知症に関わる人の間ではよく知られていることです。
これを「夕暮れ症候群」と呼んだりします。
一般的な生活の中でも、夕方は晩ご飯の用意を始めたり、帰宅したり、何かとあわただしくなる時間帯ですから、ご本人も「いつまでもここにいていいのかしら?」「何かしなくてはならないことがあるのではないかしら?」と、落ち着かない気持ちになってしまうのだと思われます。
また、介護者もこの時間帯は何かと忙しくて、なかなか認知症の方のお世話ばかりしていられない事情が、この症状に拍車をかけます。
「早く話を切り上げて別の仕事をしたい」と思いながら相手をしていると、その介護者のソワソワがご本人にも移ってしまうのです。

好きなことをしている時には起こりません

ご本人が好きなことをしていたり、夢中になっている時には「夕暮れ症候群」は起こりにくい印象があります。
なるべくこの時間帯に合わせて、ご本人の好きなことをしていただけるよう、一日の予定を組んでみましょう。

会話のなかにご本人を加える

夕方ご本人が一人でポツンとしていることがないよう、介護する方や周囲の方は用事をしながらでも積極的に話しかけてください。
話の内容は必ずしもご本人向けでなくても、語尾に「ねえ、お父さん」などとつけるだけで、一体感が生まれます。

軽食やおやつを食べてもらう

夕方の空腹感がソワソワした気分を引き起こしていることもあります。お茶とお菓子、またおにぎりなどでお腹を少し満たしてもらいましょう。
介護する方も一緒にゆっくりお茶を飲んであげると、より気持ちが和らぐようです。

照明の工夫

外が完全に暗くなれば不安が収まってくる方もいますし、逆に暗いと余計に恐怖感が増す方もいらっしゃいます。
ご本人のタイプに応じて、照明を明るくするとか、夕日が入らないようにするなど工夫をしてみてください。

⑯興奮や暴力行為がみられます。どうしたらいいですか?

認知症の患者様は、日頃の不満がたまっていたり、漠然とした不安を感じていたり、自分の思いが伝わらずいらだちを感じていたりすると些細なことで興奮したり、暴力をふるうことがあります。周囲の方がご本人のためにせっかく介助の手を差し伸べても、それがうまく理解できずにかえって邪魔に思えたり、かっとなった感情を抑えられなくなったりするからです。

力で対抗しない

暴力をふるわれた時に、周りの方がつられて興奮したり、力で押さえつけたりすると、かえってご本人の興奮を増してしまうことがあります。

慌てずに「どうして叫んだの?」「なにが嫌だったの?」とやさしく問いかけてみましょう。
身の危険を感じた時には、その場をいったん離れましょう。
刃物などの危険物は遠ざけておきます。

注意をそらす手段をみつけましょう

ご本人のなじみの歌を歌いかけたり、別の興味ある活動に誘ったりするなどして、興奮の原因となっていることから、注意をそらしましょう。
日ごろからご本人が没頭できる作業(編み物やパズルなど)をみつけておくと役立ちます。

最終的には薬物療法

誘因なく怒り出すときは、感情の安定化を目的として薬物療法を行いますので、ご相談ください。

⑰施設入所をしたほうがよいタイミングとはいつですか?

決まりきった基準はありませんし、同居家族がいるかいないかによっても大きくことなります。

独居で認知症がある場合、例えば以下のような状態になれば、施設入所を考えるタイミングと思います。

  • 日常生活で最小限の機能を遂行できない(食事が摂れない、食事を摂らない、異食がみられる)
  • 火の不始末が多く、失火の可能性がある
  • 訪問セールスや悪徳商法に騙されたことがある
  • ガスやストーブなど、暖房器具の取り扱いができない
  • 徘徊や多動などで患者さんに身体的な危惧が及ぶ
  • 排尿・排便を自分でコントロールできない

⑱介護認定の結果に納得できません。どうしたらいいですか?

認知症患者さんの介護認定では、実情にそぐわない不適切な介護度に認定されることが少なくありません。

その原因として、アルツハイマー型認知症患者さんは取り繕いが上手かったり、病識がないため、一見すると病気ではないようにみえることがしばしばあるからです。

訪問調査員の質問に対し、「私はなんでもできています。困ったことなんてありません。買い物や調理も自分でしています」などと答えてしまいます。調査員も様々なので、患者さんのいうことをそのまま鵜呑みにしたり、家族の話を聞こうとしない調査員がいるのも事実です。

このような調査員がいる ということを認識したうえで、しっかりと家族から病状を説明すること、もしケアマネージャーが決まっているのであればその人にも同席してもらい、患者さんの生活状況を調査員に説明してもらうこと が重要です。

納得いかない介護認定度を下されたときは、介護認定の変更申請をすみやかに何度でも行いましょう。

⑲訪問セールスや悪徳商法に騙されました。どうしたらいいですか?

実害を最小限にとどめるコツは、通帳や大切な書類、高額な現金などは家族が預かることです。詐欺にあうのは、独居あるいは日中ひとりでいる場合が多いので、デイサービスやショートステイを利用し、患者さんがひとりでいる時間を可能な限り短くする対策を講じることが大切です。成年後見制度の利用も考えてみましょう。

 

■参考文献

認知症 知って安心!症状別対応ガイド  メディカルレビュー社

認知症診療に役立つ77のQ&A  南山堂

認知症疾患診療ガイドライン2017  日本神経学会編

 

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