脂肪肝
目次
脂肪肝とは?
健康な人の肝臓に脂肪はほとんど蓄積していませんが、その量が過剰になった状態を脂肪肝と呼びます。
肝臓に沈着する脂肪のほとんどは中性脂肪です。口から入った脂肪は小腸で脂肪酸などに分解され、肝臓に送られて再び中性脂肪に合成されてから全身へ運ばれます。
しかし、合成する量が放出する量より多くなると、肝臓の中にたまり脂肪肝となります。
中性脂肪は脂質の摂りすぎだけでなく、余分なブドウ糖からも作られることから、糖分の摂りすぎにも注意する必要があります。
近年、脂肪肝は年々増加し、健康診断で脂肪肝を指摘される人が増えています。これまでは、脂肪肝は重大な病気と考えられていませんでしたが、その一部のアルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎は、肝臓の線維化を進め、肝硬変に進展することがわかり、油断できない病気であることがわかってきました。
脂肪肝になる理由は?
アルコールと生活習慣が大きな原因です。
- お酒の飲みすぎによる脂肪肝=アルコール性脂肪肝
- お酒以外の原因による脂肪肝=非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD、ナッフルディーと呼びます)
に大きくわけられます。
一般に脂肪肝はアルコールによるものと思われているようですが、現在日本ではアルコール性脂肪肝よりも、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の方が多いといわれています。
NAFLDの原因は、多くは肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群といった生活習慣病で、食の欧米化や車社会になったことが要因としてあげられます。
逆に、過度のダイエットによる極度の飢餓状態でも脂肪肝は起こるので、特に若い女性は注意が必要です。
NASHは30歳代以降の男性に多く見られ、女性は閉経を迎える50歳代頃になると急激に増えます。
男性の場合は、30歳代になると太り始め、内臓脂肪がたまりやすくなるためです。
女性の場合は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下するためです。
脂肪肝は遺伝するの?
肝臓への脂肪のたまりやすさには遺伝子が関連していることがわかっています。特に、PNPLA3遺伝子に変異のある人(日本人ではおよそ20%が該当)は、肥満でなくても脂肪肝や腎機能障害を発症しやすいことがわかっています。
脂肪肝はなぜ悪いの?
通常の脂肪肝であれば、肝硬変や肝臓癌に進展するケースは10年で5%以下であり、稀です。
しかしアルコール性脂肪肝の場合は、毎日大量にお酒を飲み続けると確実に肝臓はダメージを受け、アルコール性肝炎、肝繊維症、肝硬変へと進む恐れがあります。
常習飲酒の目安としては、男性であれば1日3合以上を5年以上、女性であれば1日2合以上を5年以上 が相当します。
ただし、お酒を飲まないからといって安心というわけではありません。
NAFLDには、あまり進行しない単純性脂肪肝(NAFL)と、炎症を伴う進行性の脂肪肝である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の2種類があります。
NASHを発症した場合はそのまま放置しておくと炎症がひどくなり、徐々に肝臓が線維化し、最終的には肝硬変に至ります。その割合は10年間で10~20%といわれていますので注意が必要です。
脂肪肝の診断はどうするの?
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、よほどのことでない限り痛むことはありません。そして自覚症状もありません。
肝臓が正常に働いているかどうかは、血液検査(AST, ALT, γGTPなど)をするか、超音波検査をすればわかります。
超音波検査で脂肪肝は、bright liverと呼ばれる白く光った肝臓になります。
脂肪肝以外にも肝障害をおこす疾患、例えばB型肝炎やC型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変などがあり、これらの疾患が隠れていないかチェックすることも重要です。
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の治療はどうするの?
NAFLDの原因が、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群といった生活習慣病ですので、これらの治療を行うことになります。
詳細は各々のページをご参照ください。
基本的には減量で、7%減量すれば肝臓の組織が改善すると言われています。
また糖尿病をお持ちの方であればピオグリタゾン(アクトス®)というお薬が脂肪肝の改善に有効ですし、糖尿病をお持ちでない方であればビタミンEが有用です。
■参考文献
NAFLD/NASH診療ガイドライン2020
NASH/NAFLDの診療ガイド2021