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災害に備えよう

普段、災害のことを気にして生活しておられる患者様は数少ないと思いますが、いつどこでなにが起こるのかがわからない というのが災害です。

地震や水害などの災害とまではいかなくても、例えば家族がコロナウイルスに感染し、自分自身も濃厚接触者になってしまい、病院受診もできなければ、薬局に薬をとりにいくこともできなかった という例がありました。

この時はたまたま薬局からお薬を届けてもらうことができたので事なきを得ましたが、災害時にはインフラもとまっているため、日ごろからある程度の準備をしておく必要があります。

目次

災害がやってきたら・・・困ることは?

災害時に対する3つの心構え

事前準備しておくもの

災害時の食事配給の特徴

災害時のインスリン

災害時の糖尿病の飲み薬

医療機関や診療所、救護所の受診が必要になるケース

 

災害がやってきたら・・・困ることは?

  • 災害が突如くると、予想できないことが起こります。例えば
  • 避難所に逃げ延びたけどおにぎりと菓子パンとインスタントラーメンしかない。炭水化物ばかりで血糖値なんて調整できない
  • インスリンが手に入らなくて、血糖値が高くなって調子が悪い
  • インスリンがなくなったので欲しい といったら、どのインスリンかって聞かれた。インスリンの名前なんて覚えていない
  • 災害のショックで食欲がわかない。こんなとき、飲み薬とかインスリンはどうしたらいいんだろう
  • 糖尿病ってことは、周囲に言いづらいな。

などです。

災害時に対する3つの心構え

①災害が発生したら、落ち着いて行動しましょう

災害が起こると気が動転して何をしたらよいのかわからなくなるものです。慌ててもよい結果は得られません。糖尿病患者さんにとって、急激な環境変化は血糖値を急上昇させる要因にもなりますので、まずは落ち着くことが重要です。

②可能な範囲で自力で乗り越える

災害発生直後の医療機関は、重症のケガ人など命に関わる方の対応が最優先になります。もし、今すぐに治療や入院も必要がなく、インスリンやお薬が手元にあるのなら、医療機関へいくことは可能な範囲で我慢してください。

その行動こそが多くの方の命を救い、医療者の負担を軽減することにつながります。

③遠慮せずに、周囲に協力をお願いする

避難時には、体調の変化やインスリンの不足など様々な困り事や不安が生まれます。

糖尿病患者さんは外見上、健康な人と変わらないため黙っていては誰にも気づかれず、誰も助けてくれません。自分の体調が本当に悪ければ包み隠さず伝え、周囲に協力をお願いしましょう

事前準備しておくもの

ここでは一般的な防災グッズについては割愛して、糖尿病ならではの事前準備のみ述べさせていただきます。

①薬の名前がわかるもの。例えばお薬手帳のコピーや、お薬手帳をスマートフォンで撮影したもの など

②普段のHbA1cの値や、普段の血糖値を記録したもの。詳しいデータがなくても、おおよその値を覚えておくとよいでしょう。

③飲み薬1週間分、インスリン1本+インスリンの針は予備として持っておきましょう。なお、インスリンは基本的には冷蔵庫保存ですが、常温でも1か月は保存できます。

④ブドウ糖(低血糖のときのために)

⑤3食分の食料+2Lの飲料水。脱水になると血糖は上昇しやすいので、脱水予防は重要です。糖を含む清涼飲料水は、血糖を上げてしまうので、水、お茶を推奨します。

災害時の食事配給の特徴

  • インスタント食品や菓子パンなど、炭水化物が多い
  • 1日2食の支給の場合もある
  • 思ったよりも量が少なく、低血糖になることもある

大事なことは、血糖値よりもエネルギーの確保ですので、食事はしっかりと摂りましょう。炭水化物が多く、血糖値が上がりやすいですが、ゆっくり食べることで血糖の急上昇を防ぐことはできます。

カップラーメンがでてくることもありますが、スープのもとを全部使ったり、スープをすべて飲んでしまうと塩分の摂り過ぎになるので注意しましょう。野菜やきのこ、海藻などの食物繊維を含む食品があれば積極的に摂りましょう。

災害時のインスリン

自分自身のインスリン分泌能が枯渇している患者様(主には1型糖尿病や、膵臓の全摘出術後)は、インスリンを打たないことが致命的になりますので、以下の工夫をして必ずインスリンを打ってください。

インスリンの針は、自分のものであれば何度か使用可能です(他人の針を使いまわしはダメです)。ただし何度か打っているうちに針が曲がったり詰まったりする場合もありますので、きちんと空打ちをして、インスリンがでるかどうか確認してください。

何度か使っているうちに、刺すときの痛みが強くなる場合はあります。

②アルコール綿がない場合は、そのまま消毒なしでインスリンを打っても構いません。ただし、できることなら手を洗って、インスリンを打つ場所も水洗いや清拭することが望ましいです

インスリン本体をもらう場合は、未使用品のものにしましょう。インスリンの使いまわしは感染の可能性があります。

④普段と違う種類のインスリンしか手に入らなかった場合は、いつもの1/2~1/3の量で打ちましょう

災害時の糖尿病の飲み薬

配給は炭水化物が多くなりますし、精神的なストレスも大きくなるので、災害時は血糖値があがりやすいです。よって、普段と同じような血糖にすることは難しく、多少の高血糖は許容しましょう。

糖尿病の飲み薬をどうするのか ですが、一例を下に記載します。

①SU剤(アマリール、グリメピリド、グリクラジド、オイグルコン等)→普段の半量にする

②DPP4阻害薬(ジャヌビア、エクア、トラゼンタ、テネリア等)→普段通り

③チアゾリジン薬(アクトス)→普段通り

④ビグアナイド薬(メトホルミン、メトグルコ)→普段通り。ただし、下痢や嘔吐、食欲不振など体調悪い場合は飲まない。

⑤αグルコシダーゼ阻害薬(セイブル、ベイスン等)→普段3回服用していても、食事回数が2回になるなら2回に減らす。おなかの調子がわるければ飲まなくてよい

⑥グリニド(グルファスト、ファスティック等)→普段3回服用していても、食事回数が2回になるなら2回に減らす。

⑦SGLT2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガ、カナグル等)→脱水や頻尿、膀胱炎になる可能性もあるので中止でよい

医療機関や診療所、救護所の受診が必要になるケース

発熱、嘔吐、下痢が1日以上続くとき、まったく食事をとれないとき、脱水(のどの渇き、皮膚の乾燥、だるさなど)がひどいとき、低血糖を繰り返すとき、高血糖が続くとき(目安として350mg/dl以上)は、できるだけ速やかに受診しましょう。

■参考文献

 

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