レビー小体型認知症
目次
レビー小体型認知症とは?
認知症の代表が、アルツハイマー型認知症で認知症の人の約半数を占めます。次に多いのがレビー小体型認知症(DLB)であり、約20%といわれております。アルツハイマー型認知症は女性に多くみられますが、レビー小体型認知症は男性に多い傾向があります。
脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる物質がたくさん見られます。このレビー小体が大脳に広く現れると、その結果認知症になります。
最近レビー小体はαシヌクレインというタンパク質でできていることがわかり、病気の解明に向けて研究が進んでいます。
レビー小体型認知症の症状とは?
①認知機能障害
ものごとが思い出せなくなったり、覚えられなくなったり、時間や場所がわからなくなったりする、いわゆる認知症の症状がみられます。記憶障害がおこり、判断する力や理解する力が低下し、だんだんと日常生活がしづらくなりますが、レビー小体型認知症では最初は記憶障害が目立たないこともよくあります。
一方で、注意力が低下する、料理などを手順通りに行うことができない、ものを見間違う、ものが歪んでみえる などの症状が目立ちます。
②認知機能の変動
日や時間帯によって、頭がはっきりしていて物事を理解できたり判断したりできる状態と、ぼーっとして極端に理解する力や判断する力が低下している状態が入れ替わり起こります。
③幻視
幻視とは、実際に見えないものが本人にはありありと見える症状です。見えるものの多くは小動物でや人で、「ねずみが壁をはい回っている」「知らない人が部屋に座っている」「床に水が流れている 」など、とても具体的です。
また人形を女の子と見間違えたり、丸めてある洋服を動物と見間違ったり、廊下や道路が波打って見えるなどの「錯視(見間違い)」もよくあります。
アルツハイマー型認知症とはちがい、もの忘れが軽い人が多く、後になっても見えたものの様子を正確に覚えていることがよくあります。
④パーキンソン症状
パーキンソン病に特有の症状があらわれることがあります。主なものには、動きが遅くなる、表情が乏しくなる、小さな声でボソボソと話す、筋肉・関節が固くなる、歩行障害、転倒しやすくなるなどがあります。
パーキンソン症状では、段差のない平らな床面でつまずくなど、歩行に不具合があらわれます。主な特徴は、すり足になる、小股で歩く、前かがみになる、腕の振りが小さくなる、一歩目の足が出にくい、曲がりにくい、場合によっては歩き出すと止まれないなどがあります。
よって、レビー小体型認知症の患者様は特に転倒への注意が大切です。筋肉や関節が固くなり、身体のバランスがとりづらく、歩行も小刻みとなるため容易につまずいたり転んだりします。また、反射的に身体を支える能力がおとろえているため、骨折などの大けがを負うことも少なくありません。その結果、寝たきりになる例もあります。
⑤睡眠時の異常行動
睡眠中に大きな声での寝言、奇声を上げる、怒る、怖がる、暴れるなどの行動がみられます。これは、追いかけられる、暴力をふるわれるなど、悪夢を見ている場合がほとんどです。
レビー小体型認知症の最初の症状として、レム睡眠行動障害があらわれたという人が少なくありません。これは、レム睡眠行動障害が、レビー小体型認知症を発症する可能性を示しているともいえます。
また、多くの場合、中期以降にレム睡眠行動障害はみられなくなります。。
⑥自律神経症状
血圧や体温、内臓の動きを調整する自律神経がうまく働かず、身体的に様々な不調をきたします。立ちくらみ、便秘、汗がたくさんでる、寝汗、頻尿、だるさなどがあります。
場合によっては倒れたり、気を失う危険もあります。
⑦抑うつ症状
気分が沈み、悲しくなり、意欲が低下する症状です。抑うつ症状はレビー小体型認知症の人の約4割にみられるともいわれます。
とくに初期にあらわれやすく、「気分がふさぎこむ」、「悲観的になる」、「憂うつ状態」などに伴い、意欲や自発性が低下します。レビー小体型認知症では、パーキンソン症状、認知機能の変動、幻視からくる不安感などが、これらの抑うつ症状に影響していることもあります。
レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の違いは?
レビー小体型認知症 | アルツハイマー型認知症 | |
困りごと・生活障害 | 主に注意障害・ 視覚認知障害に基づく |
主に記憶障害に基づく |
幻 視 | 多い | 少ない |
妄 想 | 『嫉妬妄想』など 幻視に基づく妄想 |
『物盗られ妄想』など 記憶障害に基づく妄想 |
徘 徊 | 少ない | 多い |
認知機能の変動 | あり | なし |
睡眠障害 | レム睡眠行動障害に伴う 睡眠障害 |
単純な睡眠障害 |
パーキンソン症状 | 多い | まれ |
レビー小体型認知症の治療は?
レビー小体型認知症で治療が必要なポイントは以下の4点です
1. 注意障害・視覚認知障害などの認知機能障害に対する薬
2. 幻視や妄想などの精神症状に対する薬
3. パーキンソン症状に対する薬
4. 便秘などの自律神経症状に対する薬
ドネペジル という薬が保険で使用でき、レビー小体型認知症でみられる認知機能の障害を改善して、症状が進行するのを遅らせるお薬です。症状が変わらなくても、何も治療しない場合よりも、症状の進行を遅らせていると考えられます。
またレビー小体型認知症の認知機能障害に特徴的な「注意力の低下」を改善し、注意力や覚醒の変動等を少なくすると言われています。
ドネペジルでは改善しきれない精神症状については、抗精神病薬を使用する場合もありますが、お薬に過敏に反応したり、認知機能の悪化を起こす場合もありますので、患者様一人一人の状態にあわせて適宜調整させていただいております。
パーキンソン症状に対してはパーキンソン病のお薬を使用したり、便秘に対しては緩下剤を使用したりします。
レビー小体型認知症で必要な、転倒予防
レビー小体型認知症では、パーキンソン症状という、身体の筋肉や関節が固くなり、思うように動かなくなる症状があらわれます。
動作もゆっくりになり、小股やすり足で歩くため何もない場所でもつまずきやすくなります。また、姿勢を保ったり、立て直したりする反射機能もおとろえるため、少しの接触が転倒につながります。
さらに、頭がはっきりしているときとそうでないときの状態の変化にともなって注意力や集中力が低下するために、より転倒の危険が大きくなります。また、急な血圧の低下によっても転倒の危険が高まります。
レビー小体型認知症の人はアルツハイマー型認知症の人に比べ、約10倍転びやすいといわれています。転倒による骨折は、QOLを低下させる大きな要因になることから注意したいものです。
ボーとしている時には、「一人で歩かせない」「そばにいて見守ってあげる」といった対応が必要になります。
レビー小体型認知症における介護のポイント
幻視や見まちがいは、室内の環境が関係することが多いため、室内の環境を見直しましょう。なかでも室内の照明は大切です。見まちがいは暗い場所でおこりやすいため、室内の明るさを統一し、影をつくらないことで、幻視や見まちがいを減らす助けになります。また、壁に洋服をかけない、周囲から目立つものは置かない、壁紙の模様をシンプルなものに変えるなどの工夫も効果的です。
幻視はご本人にとって現実的に見えています。まず、「否定しない、肯定しない」の基本姿勢のもと、そのことを理解し、受け入れることが大切です。「何も見えない」「錯覚だ」などと強く否定したり、感情的な対応はご本人が混乱するだけではなく「妄想」へ発展することもあります。見えるものによっては恐怖を感じることもあるかもしれません。ご本人の感情を理解した上で安心していただけるよう対応しましょう。また、多くの幻視は近づいたり触ったりすると消えてしまいます。ご本人や介護者が近寄り、触ってみるのも良い方法です。
妄想はご本人の思い込みが強いため周囲の言葉で理解してもらうのはとても困難です。妄想はイライラや怒りをともなうことが多いため、言葉ではなく、優しく手を握ったり、どのような気持ちか聞いてあげると、心が落ち着く場合もあります。
家族や介護者が妄想の対象となった場合には、無理に関わらず、少し距離をとることで、妄想が軽くなることもあります。
まとめ:レビー小体型認知症チェックリスト
■実際にはないものが見える
■頭がはっきりしているいときと、そうでない時の差が激しい
■動作が緩慢になった
■筋肉がこわばる
■小股で歩く
■睡眠時に異常な言動をとる
■物忘れがある
■うつ的である
■妄想がみられる
■転倒や失神をくりかえす
これらに5個以上あてはまる場合はレビー小体型認知症の可能性がありますので、ご相談ください