骨粗鬆症
目次
骨粗鬆症とは?
健康な骨は絶えず古い骨から新しい骨に生まれ変わる「新陳代謝」をしてバランスが取れた状態にあります。
骨粗鬆症の骨は、骨を壊す細胞(破骨細胞)が骨をつくる細胞(骨芽細胞)より働かされ、骨がこわされ過ぎている状態です。
結果として骨がスカスカになり骨折しやすくなる状態にあります。
骨粗鬆症の患者様の骨密度は若い人の70%以下に減っていたり、背骨や太もものつけ根の骨が軽く転んだ程度で折れてしまうこともあります。
骨粗鬆症に気付かず、病状が進んでしまうと、気付かないうちに背骨がつぶれて背中が大きく曲がってしまったり、尻もちをついた程度で寝たきりになるほどの骨折をする可能性が高くなります。そのため、早期に発見して、治療を始めることが重要になります。
高齢の女性では、閉経後にホルモンのバランスが変化して特に骨粗鬆症になりやすくなっており、男性より2〜3倍多くの人が骨粗鬆症になっていると考えられています。
<骨量の経年的変化(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版)>
骨粗鬆症はどれくらいの患者さんがなっているの?
日本では一般的に40歳以上で骨粗鬆症を発症します。40歳以上では、腰椎の骨粗鬆症は男性で3.4%、女性で19.2%、大腿骨頚部の骨粗鬆症は男性で12.4%、女性で26.5%です。
<骨粗鬆症の年代別有病率(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版)>
人数に換算すると、腰椎の骨粗鬆症は約640万人(男性80万人、女性560万人)、大腿骨頚部の骨粗鬆症は約1070万人(男性260万人、女性810万人)と推計されています。
これらをまとめると、腰椎か大腿骨頚部のいずれかで骨粗鬆症と診断される患者は1280万人(男性300万人、女性980万人)となります。
また、1年間でおよそ97万人(男性16万人、女性81万人)が新たに発症していると推定されています。
加齢に伴って増えるため、高齢化が進む日本では、骨折で要介護となる人の増加が社会的な問題となっています。
骨粗鬆症になる理由は?
加齢、食生活、喫煙、飲酒、ステロイド剤の使用、骨折の家族歴、運動不足、合併症(糖尿病、リウマチ、肺気腫、慢性腎臓病 等)などが骨粗鬆症のリスク因子と言われています。以下のチェックを参考にして御自身が将来骨粗鬆症になりやすいかチェックしてみてください。
♠判定方法
当てはまる個数が3個以下☞現在は心配ありません。これからも生活習慣に気を付けましょう。
当てはまる個数が4~7個☞将来的に骨が弱くなる可能性があるので、気になる点があれば改善しましょう。
当てはまる個数が8~11個☞将来的に骨が弱くなる危険性がかなりあります。生活習慣に気を付けるとともに一度、検査を受けてください。
当てはまる個数が12個以上☞現在、骨粗しょう症のリスクが高いと考えられます。一度、検査を受けてください。
骨粗鬆症はなぜ悪いの?
高齢者の骨粗鬆症はちょっとしたことで骨折を起こし、特に大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨)を起こすと寝たきりや介護
の原因となってしまいます。
下の表に示す通り、2019年の国民生活基礎調査の結果では、「骨折・転倒」は要支援や要介護状態になる主な原因になっています。
寝たきりや介護される状態にならないためにも、積極的に骨粗鬆症の対策をしていきましょう。
骨粗鬆症の治療はどうするの?
まずは生活習慣の改善が大事になります。ポイントは以下の3点です。
①栄養のバランスを考えて、カルシウムを十分に摂取すること。骨粗鬆症の予防を念頭においたカルシウムの1日あたりの摂取目標量は800㎎といわれています。
カルシウム800㎎といってもなかなか想像しにくいと思いますので、目安としては次の食品表を参考にしてみてください。
②運動をかかさずしましょう。運動が刺激となって骨にカルシウムが蓄積されます。例えば、女性は1日6,000歩、男性は7,000歩から歩いてみましょう。
他に骨粗鬆症によい運動は次の資料を参考にしてみてください。
③日に当たりましょう。紫外線によって体内のビタミンDが活性化し、カルシウムの吸収が高まります。夏なら木陰で30分、冬なら手や顔に1時間程度が目安です。ただし、ガラスは紫外線をあまり通さないため、窓越しの日光浴ではあまり効果は望めませんので注意してください。
しかし、生活習慣の改善をしても一度低下してしまった骨密度は増えないことが多く、その場合は骨密度を増やすためにお薬を使ったほうがよい場合もあります。
骨粗鬆症のお薬には代表的なものとしてビスホスホネート薬、抗RANKL(ランクル)抗体薬、活性型ビタミンD薬、SERM(選択的エストロゲンモジュレーター)などがあります。
患者様の骨密度の状態によって、また患者様の体内にビタミンDが十分あるのかどうか、飲み薬がいいのか、点滴がいいのか等によって薬を専門的に使い分けておりますので、一度気になる方はご相談ください。
【主な骨粗鬆症の薬】
薬剤分類名 | 特徴 |
骨が壊れるのを防ぐ薬(骨吸収抑制剤) | |
ビスホスホネート薬 | 骨を壊す細胞の働きを抑えて、骨を壊れにくくします |
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM) | 骨に対して女性ホルモンと同様に作用し、骨のカルシウムが体内に溶けだすのを抑えます |
カルシトニン薬 | 痛みを和らげる作用と、骨のカルシウムが体内に溶けだすのを抑える作用があります |
抗RANKL抗体 | 骨の成分を溶かす体内の働きを抑え、骨を壊れにくくします |
骨を作る薬(骨形成促進薬) | |
副甲状腺ホルモン薬 | 骨の新陳代謝を促し、新たな骨を造る作用があります |
その他の薬 | |
カルシウム薬 | 骨量の減少を予防します。カルシウム摂取量の少ない場合に投与します |
活性型ビタミンD3薬 | 腸からのカルシウム吸収を助け、骨を強くします |
ビタミンK2薬 | 骨が造られるのを助けます |
骨粗鬆症の薬は一生飲まないといけないの?
加齢に伴い、基本的には人間の骨は弱っていきます。よって、基本的には骨粗鬆症のお薬は一生飲む と考えておいたほうがよいと思います。
ただし、例えば骨粗鬆症のお薬を3年~5年間飲むことで十分に骨密度が上昇すれば一時的にお薬を休止してみる ということも可能なお薬があります。
お薬をずっと飲むのがつらい という場合には、半年に一回の皮下注射や、1年に一回の点滴注射をすることで骨粗鬆症の治療を行うこともできます。
骨密度の測定方法は?
女性では閉経前後の50歳くらいから、男性は65歳頃から徐々に骨密度が低下し始めます。しかし、骨粗鬆症は自覚症状がないまま進行することが多いですので、このあたりの年代からできれば1年に1回ずつ測定して、自分の骨密度がどのように変化するのか観察するとよいでしょう。
少なくとも女性であれば65歳以上、男性であれば70歳以上、その他、アルコールをたくさん飲まれたり、たばこをたくさん吸われたり、家族に大腿骨頸部骨折の方がいる場合は特に注意して骨密度を測定してみましょう。
骨密度の検査をしなくても、25歳のときに比べて身長が4cm以上縮んだり、3年間で身長が2cm以上低下しているような場合は要注意です。
ちなみに腰椎の圧迫骨折を起こしても半分以上の方は痛みを感じませんので、「腰痛がないから私は圧迫骨折していない」とは言い切れません。
骨密度はきちんとした機器で正確に測定することが非常に大事ですので、あえて当院では院内に骨密度を測定する機器はおいておりません。測定する場合は近隣の総合病院をご案内させていただきます。
■参考文献
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版
2019年 厚生労働省 国民生活基礎調査の概況
骨粗しょう症財団ホームページ(もう少し骨粗鬆症を詳しく知りたい方へおすすめです)